不動産を売却したときは譲渡所得税として、売却価格から取得価格(購入価格)と購入費用を控除した利益に対して、税率(所有期間が5年超の場合は約20%、5年未満の場合は約40%)を乗じて賦課されます。(但し、自宅の場合には3,000万円の特別控除や買い替え特例等の制度がありますが、詳しくは税理士さんにお聞きください)
しかし、この購入価格の資料がなく、いくらで購入したか不明なことも多々あり、この場合は概算取得費として税務上は売却価格の5%を取得価格とすることが認められています。
そこで、地価等が上昇する前で、現在とは物価が大きく異なる昭和初期に取得されていたのであれば、この5%相当が概ね適正な価格となり得ることもあろうかと思いますが、極端な話し、数年前に取得した不動産について証拠資料がないからと言ってこの5%相当しか認めてもらえないのであれば、明らかに過分な税金を納めなくてはならなくなり、流石に不合理と言えます。
もっとも数年前であれば資料が残っていたり、販売業者や銀行等からも何らかの資料が得られ、取得価格不明となるケースは少ないかと思いますが、これが数十年となればどうしてもわからないケースがあります。
このようなケースでは、国税不服審判所平成12年11月16日採決に則り、市街地価格指数(日本不動産研究所)の変動率を以って売却価格を時点修正する考え方も認められていますが、必ずしもこれによる価格が税務上是認されるものとは限らないことには留意が必要です。
この点、不動産鑑定の活用により、上記の考え方に準してより精緻かつ信憑性の高い価格変動率を求めたり、取得時当時の売買事例との比較を行ったりして、合理的に取得価格を導き出き出すことで、5%以上の価格が税務上是認される可能性が非常に高まることになります。
なお、当該鑑定に際しては、償却を踏まえた建物価格との関係や、そもそも個別性が強く介在する売却価格を前提にして良いものなか等、多角的な面からの検証が必用となり、相応の経験と知識が必要となりますところ、弊社ではこの種の業務も数多く手掛けておりますので、ご安心してご相談くださいませ。